研究者たちが、脳腫瘍を成長させるガン幹細胞を特定することに成功した。
これらのガン幹細胞を消滅させる方法を調べることによって、さまざまなガンに対する数多くの新たな治療法が生まれるだろうと、この研究を成功させた科学者たちは述べている。この研究成果は、『 http://www.nature.com/nature/ ネイチャー』誌の11月18日号に掲載されている。
科学者たちはこれまでに、乳ガンや http://www.wired.com/news/medtech/0,1286,64549,00.html 白血病におけるガン幹細胞は特定できていた。しかし、乳ガン以外の固形腫瘍におけるガン幹細胞の証拠となるものは発見できていなかった。
「今回の研究で、他の細胞のガンにおいても幹細胞が重要だということがわかった」と、 http://www.sickkids.on.ca/ ホスピタル・フォー・シック・チルドレン病院(カナダ、トロント)で発生生物学研究に携わるピーター・ダークス博士(神経外科)は述べた。「乳ガンや白血病だけのことではない」
http://www.cancer.ca/ccs/internet/niw_splash/0%2C%2C3172%2C00.html カナダ・ガン協会の資金援助を得て実施された今回の研究は、脳腫瘍の細胞をマウスに注射するという形で行なわれた。その結果、注射した細胞がマウスの体内で新たな脳腫瘍を発生させ、さらにその成長を促進していることがわかった。脳腫瘍は人間でも非常に致死率が高く、広がるのが速いガンの1つだ。
「ガン幹細胞の特定は、こういった恐ろしい病気との戦いにおける大きな前進だ。腫瘍が成長するには自己複製が不可欠なので、これらの細胞を標的とする薬剤によって効果的な治療が可能になるだろう」と、ミシガン大学医学部(ミシガン州アナーバー)の http://www.cancer.med.umich.edu/clinic/lymphomastaff.htm マイケル・クラーク教授(内科学、細胞・発生生物学)は述べた。クラーク教授の解説もネイチャー誌に掲載されている。
今回の研究では、CD133という細胞マーカーを発現している100個の腫瘍細胞を移植したところ、マウスに新しく腫瘍が発生した。一方、CD133を発現していない腫瘍細胞を何万個もマウスに注射したが、腫瘍は発生しなかった。
研究の最終目標は、腫瘍を成長させるたった1つの幹細胞を見つけることだ。スタンフォード大学の http://cmgm.stanford.edu/devbio/FAC%20RES%20AND%20PUB/WEISSMAN/weissmansum.htm アービング・ワイスマン教授(発生生物学)は、白血病においてこの細胞を見つけ出している。ある1つの細胞が腫瘍の成長を促進するのであれば、腫瘍の成長を止めるためにはその細胞を標的にすればいい。
ガンの腫瘍は、はじめのうちは化学療法や放射線療法で消えるが、時間がたってから再発することが多い。研究者たちは現在、腫瘍再発の原因は幹細胞にあると見ている。薬によってこの腫瘍の幹細胞を消滅させることができれば、腫瘍は再発する手段を失うのではないか、とダークス医師は述べている。
ダークス医師によると、腫瘍の全細胞におけるガン幹細胞の割合は非常に少ない(乳ガンで2~5%)ため、研究時間の約95%は見当違いの細胞の研究に当てられてきた可能性があるという。
次の研究段階は、これらのガン幹細胞がどのようにして働くかを知ることだと、ダークス医師は述べた。
「これらの細胞の分離に成功したので、次は分子レベルでの仕組み――つまり、どんな遺伝子が発現することで他のガン細胞とは異なるものになるのか――を解明する必要がある」
[日本語版:天野美保/福岡洋一]
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(WIRED) - 11月22日17時50分更新
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