理化学研究所:リーダーがデータ操作を指示 再解析し論文
独立行政法人・理化学研究所の40歳代の研究チームリーダーが99年、統合失調症と遺伝子の関連を探る研究で期待通りの結果が出なかったため、部下に指示してデータの一部を除外し、別のデータを加えて解析をやり直していたことが分かった。再解析で期待通りの結果となり、01年に米国の専門誌に論文が掲載された。国内トップクラスの研究機関での“データ操作”は波紋を広げそうだ。
遺伝子には人によって塩基1個が別の塩基に置き換わるSNP(スニップ、一塩基多型)と呼ばれる部分があり、病気のなりやすさに関係しているとされる。同研究所脳科学総合研究センターの研究チームは、「IMPA2」と呼ばれる遺伝子で見つけた3カ所のSNPで、統合失調症や感情障害との関連を探った。
論文によると、統合失調症302人、感情障害205人、症状のない308人が提供した血液から取り出した遺伝子を分析。統合失調症の人は症状のない人に比べ、SNPが3カ所とも別の塩基に置き換わっている割合が高かった。感情障害の人は症状のない人と差がなく、論文は「日本人ではIMPA2は統合失調症に関係している可能性がある」と結論した。
複数の関係者によると、研究では当初、統合失調症の遺伝子は309人分を解析し、SNPのうち1カ所は症状のない人と差がつかなかった。309人の中には、論文にはない、死亡した患者の脳から取り出した遺伝子31人分が含まれていた。この31人分は、血液からの遺伝子と区別せず、一連の試料として管理されていた。
99年末に報告を受けたリーダーは、31人分のデータを除き、違う遺伝子を加えて解析するよう指示。部下が、血液から取り出した別の24人分の遺伝子を加えて解析し、3カ所のSNPとも症状のない人と差がついた。
リーダーは「脳の提供者は血液提供者に比べて年齢が高く、男性が多い。条件の違う遺伝子を解析から外しても問題はなく、外したことを論文に書く必要もない」と説明する。一方で、「最初の解析で差があれば、それで結果を発表した」とも話す。
医学研究では、解析したデータはすべて明らかにし、除外したデータは理由を明示するのが当然とされる。例えば、新薬の臨床試験で都合の悪いデータを外して解析したことが発覚した場合、国の承認は得られない。
国の薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会の委員を務める岩崎学・成蹊大教授(数理統計学)は「都合の悪い結果が出たからと言って、一部のデータを外してしまうことは許されない。明らかにおかしいデータというなら、外した経緯も論文に書くべきだ。そうしないと、いくらでも都合のいい結果を出せる」と指摘している。【鯨岡秀紀、渡辺暖】
毎日新聞 2004年11月18日 3時00分
http://www.mainichi-msn.co.jp/kagaku/medical/news/20041118k0000m040162000c.html
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